始まりのとき♡

「そうまくん、なにつくってるの」

「んーとね、おしろ!」

「おしろ……?しんでれらとか、しらゆきひめとかがすんでるところ?」

「うん。でも、おひめさまだけじゃなくて、おうじさまもすんでるよ。」

「おうじさまかぁ。そうまくんはおうじさまになりたいの?」

「……うん。なりたい。それで、おひめさまをまもって、おしろでいっしょにくらすんだ。……それでね、」

「走馬~そろそろ帰るわよ~。あかりちゃんも一緒に連れてきてね~」

「……はーーい。……あかりちゃん、いこっか」

「……おひめさま、だれ?」

「え?」

「……おうじさまがそうまくんで、おひめさまはだれなの……?うぅ……ぐすっ……ひぐっ」

「わ!どうしたの、なかないでよ……。……あかりちゃん。」

「……なに?」

「……おひめさまはね、あかりちゃんだよ。……ぼくがあかりちゃんのおうじさまになって、おしろでずっといっしょにくらすんだ!」

「ぐすっ……ほんと?あかりのおうじさまになってくれるの?」

「うん!」

「……ずっといっしょにくらしてくれるの?」

「うん!おうじさまだからね!」

「……ありがと。やくそくだからね」

「うん、はりせんぼんのむよ!」

「あはは、それはやくそくやぶったらでしょー?」

「あ、そっか。うん、やくそくやぶらない!ちゃんとまもるよ。」

「……わかった。ありがと。」

「走馬~あかりちゃ~ん、置いてくわよ~」

「まってーー!……じゃあかえろっか!」

「うん!」

  ――――――――――――――――

「ハッピバースデートゥユ~ハッピバースデートゥユ~、ハッピバースデーディアあーかり~ ハッピバースデートゥユ~! 灯、12歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう。ケーキも買ってきてくれてありがとね。」

「おう!今月のお小遣いだいぶつかっちゃったけどな~」

「そういうことは言わなくてもいいの。でも、よく私の誕生日覚えてたね。」

「いや……おれも誕生日一緒だろ!!逆にどうやったら忘れるんだよ!! というか……その……そっちからはなんかないのかよ!」

「はいはい、わかってるよ。……走馬くんも12歳の誕生日おめでとう。はい、これ。」

「ん?なんだこれ……って、瞬足の炭治郎モデルじゃん!!ずっとほしかったんだよ!これでコーナーで差をつけつつ鬼を倒せる! 灯、ありがとう!」

「うん。喜んでくれてよかった。……じゃあ、もう遅いし、ケーキは家帰って食べよ。帰ろっか。」

「ん……そう……だな。いや……その……もうちょい……話してから帰ろうぜ。」

「えー?なんで?家帰ってから話せばいいじゃん。」

「いや……その……ちょっと話したいことがあってさ」

「だからー、家帰ってからじゃだめなの?それか帰りながらでもいいじゃん!」

「違うんだって!そういうのじゃなくて……ちゃんと話したいんだよ。」

「え……なに?なんか怖いんだけど」

「いや……その……さ。灯は……前にした約束、覚えてる?」

「約束……?あ、私に借りた500円返す約束!そういえばまだ返してもらってない!」

「あ、すっかり忘れてた……ごめん…… いや!じゃなくて、昔この公園で、あそこの砂場でした約束だよ!小学校入るくらいの時にさ。」

「砂場……うん。覚えてるよ。」

「……そっか。それならいいんだけど。で……その、約束でさ、おれが……その……ああやって言ったじゃん?」

「ん~?ああやって~?なんだっけ??」

「お、おい!覚えてるって言ってただろ! だから……その……おれが灯の王子様になって……ずっと一緒に暮らす、みたいな……やつだよ。言わせるなよ!恥ずかしい!」

「あはは、ごめんって。でも、うん。言ってたね。それがどうかしたの?」

「いや……考えたんだけどさ、その、ずっと一緒にいるってことはさ、結婚、するってことだろ……?」

「ん、まあそうなるね。」

「でも、結婚する前に、その……『付き合う』っていうのをやらなきゃいけないだろ……?」

「うん……そうだね。」

「うん、でもさ、おれたちって仲もいいし毎日一緒に帰ってるけど……なんというか……なんでもない、じゃん。」

「……うん。」

「だから……その……そろそろさ、付き合ってもいいんじゃないか……って思ったんだよ。」

「…………」

「だからさ……ふ~!よし!言うぞ!……おれは、灯のことが好きです!付き合ってください!」

「……ぃぃょ。」

「え?なんて?」

「……私も!走馬くんのことが好きです!……だから、よろしくお願いします!」

「……っ!……なんか……恥ずかしいな!でも……ありがとう!こちらこそよろしく!」

「うん……やっとだね。言うのが遅いよ……」

「ごめんて!でも、これでも勇気振り絞ったんだぞ!」

「はいはい、よくできました。……それで、さっきの話だけど。」

「ん?さっきの話?」

「500円。返してもらってないよね。」

「あ~だからごめんって~。あ、でもさ、ケーキ2000円もしたんだぜ!?それで許してくれよ~」

「それとこれとは別物です。明日までには返してね。じゃないと~?それが原因で別れちゃったりとか~?」

「ずるいぞ!くっ……わかったよ……もう今月のお小遣いなくなった……」

「あははは、ま、とりあえず帰ろ!たぶん晩ご飯ごちそうだし!」

「そうだな……」

  ――――――――――――――――